筆者が15年の歳月をかけた研究の集大成的な新書。
伊藤博文ビギナーの自分にとってはいきなりのフルコース。
伊藤博文は、ひろーい幅の(何色も色をもちうる)思想をもって、うまくその時代時代の政治家や知識人と手を結び、
明治憲法制定、政友会、韓国統監と渡り歩いたのだというイメージを得た。幅がとても広いだけに節操がない、政治家としての理想がないとの評価をまま受けるそうだけれども、この本は、
伊藤博文には理想がないわけでなく、その理想がひじょーに柔軟であるがゆえだということを明らかにしたものと理解した。そして、一般に言われているらしい図に乗りやすいというかお調子者みたいな人物像の一方で、この本がテーマにしているように、人一倍、いろんなことを学ぼうという努力をしている知・
実学の政治家だったようだ。なんだかんだ言ってもこれだけ後世に著名な政治家、ある意味ではやっぱり成功ということになるのだとは思う。
とくに合点がいったのは
立憲政友会設立の話。それから東大の前身は、官僚育成を念頭に置いて設立されたのだということは在学中から聞いたことはあったが、数々の文献に裏打ちされて実際にそうであることが分かった。そしてここにも
伊藤博文が表で噛んでいたようだった。