ヘイトスピーチ

ヘイト・スピーチとは何か (岩波新書)

ヘイト・スピーチとは何か (岩波新書)

とてもよくまとまってると思う。ヘイトスピーチの現状、ヘイトスピーチの定義、諸外国での扱い、法規制の是非。
弁護士による本で、法的問題についてしっかり書かれている。この本の内容は大方正論。状況放置は正当化できないという印象をもつのがむしろ普通だと思う。ただ現行の刑事法規で対処しようとすると、侮辱や名誉毀損の対象が不特定多数であることがネックになる。さらに、明らかなヘイトスピーチ(問題となった京都の朝鮮学校に対するもののような)を想定すれば対抗言論が働かないことは明らかだけれども、その線引きをどうするかという問題。これを「民族」に絞って立法するというのがこの本の提言。一方で問題となる濫用の危険性について…それは現行の他の刑事法規同様節度守ってやってもらうしかないのでは。
別の学者が書いた論文(奈須祐治「わが国におけるヘイト・スピーチの法規制の可能性」法学セミナー707号25頁以下)にも接したけれども方向性は近いものと感じた。