赤ちゃんの不思議

赤ちゃんの不思議 (岩波新書)

赤ちゃんの不思議 (岩波新書)

けっこう難しい本というか、赤ちゃんてこんなすごいんだよ!という感じでなく、その結論のための、赤ちゃんの認知に関する研究方法が分かる。
赤ちゃんが何を考えてるか、何を分かっているかを見極めることは、確かに少し考えればわかることだけどけっこう困難。そこで取り入れられてる方法が、一条件だけ変えた複数の対象に対する注視時間の差異の分析や心拍などの生理的な変化をみる方法。注視時間は特に指標として用いられることが多いけれども後の章ではこの方法の限界も解説されている。
馴化ー脱馴化法の仕組など理解をがんばらないとならない言葉も幾つかあったけど、赤ちゃんが映像と現実を区別している幾つかの実験結果や、他者の表情から受ける影響、生後6ヶ月頃までは日本人の赤ちゃんもLとRを聞き分けられるけどその後聞き分けられなくなるなど、いろいろ面白い。実験方法やその限界まで記述してくれてるので、一つの結果からどこまで言えるかということも考えられて、よい。ほかにも、妊娠中には(ラットやサルによる研究によれば)学習能力が上がるという話や、赤ちゃんの脳の発達の様子など(胎生5ヶ月まではシワはなく滑らかな脳の表面だけど6ヶ月の今頃から少しずつシワができてくらしい)、面白かったです。