社会・刑事政策−貧困大国アメリカ

貧困大国アメリカ3冊シリーズの3冊目。これもすごーく面白かった。テーマとしては1冊目とも共通してるけど、この本はオバマ政権以降の話、特に遺伝子組み換え食品にまつわる構造についてなど。
立法過程、とりわけ州法に大企業の力が働く構造や、法改正の裏の意図(そんな意図はないとは言っても実際に否定のしようのない解釈)を紐解く話を読むと、もはや恐ろし。自分もせっかく法律が専門なのだから、報道のサマリーだけに頼らず原情報にあたるべし、と思いました。
農業や養鶏業が大資本に絡め取られていく構造も何とも言えない。資本経済を突きつめるとこうなってしまうのか。正確な情報へのフリーアクセスと意見発信という砦は守りたいもの。。
さしあたり、食べ物買う際にはなるべく安いものをとの考えは改め、なぜ安いのか分からないものは、やめ、フツーの製法のものを求めたい、との思いを強くしました。

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

この本もよかった、刑務所の話が特に。刑務所の存在は、連邦や州が直面する財政難の解決策に他ならないという。民営も、最近では政府経営の刑務所も、受刑者に対して受刑中の部屋代、食費等様々な経費負担を定めており、このほかにもたとえばカリフォルニア州法では薬物犯罪と窃盗と強盗で逮捕された全被告人に囚人積立金と法定手数料数万円の支払が義務付けられるそうだ。加えて利子と罰金併科。犯罪者が三度目の有罪判決を受けた場合に最後に犯した罪の重さに関係なく自動的に終身刑にするという州法もあるという。刑務所への投資は、”絶対空室の出ない不動産”という利益率が高いビジネスとして注目されているとのこと。。。受刑中にさらに借金漬けにして社会復帰を阻むシステムはどうみてもおかしい。アメリカの総人口は世界の5%だが囚人数は世界の25%を占めるという。なんてことだ。
どこかで市場経済に線を引かないと、こうなるのはいわば至極ありうる帰結なのかもしれない。こんなのいやだよー。

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

おもしろかった。こうして調べ上げて一つの本にまとめた彼女すごい&こんなの書けてうらやましい。
貧困と国の制度と肥満のスパイラル、民営化の弊害、学生の借金と米軍の関係、グローバルな米軍など、、、思わず息を飲む話がいろいろとありました。根拠も示しながらわかりやすくよく書かれてる。
市場原理の弊害の一つというか、民営と国営のバランスについても考えさせられました。