「高齢者万引きの増加」報道の印象と未成年者による万引きについて

人口比率を念頭に置いて考える必要があると思います。

高齢者万引き、10代上回る

 県内で昨年1年間に万引き容疑で検挙された65歳以上の高齢者は、全体の約3割を占め、統計のある2004年以降、初めて未成年者を上回ったことが、県警への取材でわかった。高齢者の社会的な孤立が一因とする指摘もあり、高齢者対策が求められている。(脇西琢己)
 横浜市中区の量販店で8月10日、酒やつまみ、衣類など7点(約5500円相当)を万引きしたとして、同区の男(70)が巡回中の男性警備員に取り押さえられた。男は加賀町署に窃盗容疑で逮捕され、横浜区検が横浜簡裁に窃盗罪で起訴している。
 同署によると、男は一人暮らしで、生活保護による一定の収入があり、逮捕時も商品を買えるだけの現金を持っていた。調べに対し、「お金がもったいなかった」と供述したという。
 県警捜査3課によると、昨年1年間に万引き容疑で検挙(逮捕や書類送検など)されたのは計5366人。65歳以上の高齢者は1594人(29・7%)で、長く多数派だった未成年者の1096人(20・4%)を上回った。同課幹部は「未成年者が換金や転売目的でDVDやゲームソフトを盗むケースが多いのに対し、高齢者は食品や日用雑貨など、少額の生活用品を盗むことが多い」と指摘する。
 高齢者による万引きは全国的にも増加傾向で、警察庁のまとめでは、昨年1年間に全国で検挙された9万3079件のうち、65歳以上の高齢者は2万8673人(30・8%)を占めた。万引き容疑での高齢者の検挙数は、1991年から22年連続で増加している。
 元警視庁科学捜査研究所研究員の越智啓太・法政大教授(犯罪心理学)は「万引きを繰り返す高齢者は、趣味の商品は代金を支払って購入するのに、生活必需品は万引きする傾向がある」と指摘する。
 越智教授によると、高齢者には「日本の高度成長期を支えた」というプライドがある人が多く、「少々のことなら許される」と思っている人もいるという。原因の一つに考えられるのは社会的な孤立。家族や親しい友人が周囲にいると、「犯罪で社会的なかかわりをなくしたくない」と、心理的なブレーキが働くが、孤立した状態だと歯止めがきかなくなりやすい。
 越智教授は「高齢者が孤立を感じず、社会とかかわれる居場所づくりが求められる」と提言する。
 一方、万引き防止の啓発活動は青少年向けの活動が中心だ。県内各地の商店主らで組織し、万引き防止を呼びかける「県万引防止対策協議会」は、万引きを「非行の入り口」と捉え、学校などで少年・少女に向けた啓発活動を続けているが、高齢者向けの活動は行っていない。同協議会の窓口となっている県警少年育成課は「高齢者に万引きを思いとどまらせる対策も考えていかなければならない」としている。
(2013年9月21日 読売新聞)

総務省統計局HP(http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2012np/)によると、65歳以上の高齢者人口(平成24年9月15日現在推計)は3074万人で、総人口に占める割合は24.1%(人口、割合共に過去最高)。神奈川県内でみても21%ほど。
一方、記事で言われている「未成年者」は、刑事処分の対象になりうる14歳以上の少年のはずだけれども、同総務省統計局HPで入手可能なデータとして、平成24年10月1日現在の14〜19歳の人口は724万7000人。総人口に占める割合は、5.6%。
万引き検挙者に占める高齢者の割合は30%強とのことで、総人口に占める高齢者の割合である24%強よりも高いということからは、若干、高齢者はその他の年齢層に比べて注意する必要があるとはいえるけれども、
14〜19歳の人口と、65歳以上の人口を考慮にいれずに、「万引き検挙者のうち未成年者は1096人=20.4%、高齢者は1594人=29.7%」と単純比較するグラフは、間違った印象を与えるように思います。

依然として、より注意が必要なのは、総人口中5.6%しかいないのに、万引き検挙者に占める割合は20.4%という未成年者であることは念頭に置いておく必要があると思われます。