DV加害者更生支える−DV令状請求・加害者更生について

DV更生プログラム受講の男性「自分が加害者と思わず」/神奈川
 自らが「加害者」だとは気付かなかった。「言葉の暴力」なんて、想像すらしなかった−。妻へのドメスティックバイオレンス(DV、配偶者らへの暴力)を繰り返していた男性は、そう振り返る。更生プログラムを1年以上受講した今も、夫婦関係の修復に向けた模索は続く。昨年度、県内の公的機関に寄せられたDV関連相談は過去最多。県内で唯一、更生プログラムを実施するNPO法人は「被害者の保護だけでなく、加害者を根絶する取り組みが急務」と訴えている。
 「幸せな家庭をつくりたいと願い、家事も育児も仕事もきちんとやる『よくできた旦那さん』になろうと頑張ってきた。でも、感謝の言葉もなく、自分の思い通りに動かない妻に腹を立てていた」。横浜市に住む30代の男性会社員は、妻への暴力を繰り返していた理由を静かに語った。
 結婚後5年ほどが過ぎた昨年3月、体調を崩して寝ていた妻に皿を投げつけ、頬を平手打ちした。男性が会社を休んで作った食事を、妻が冗談めいてけなしたことに逆上。結婚前から絶えなかった口げんかには我慢を続けてきたが、「これまでの仕返し」とばかりに「爆発した」。
 「やめて、怖い」と深夜に実家へ逃げ出した妻が約1週間後、携帯電話のメールで告げてきた。「あなたがやっているのはDV」。更生プログラムの受講を勧められ、NPO法人「女性・人権支援センター ステップ」(栗原加代美理事長)に通うようになった。
 男性は受講後、初めて自分の行為がDVだったと自覚した。身体的暴力は「体力に自信のある夫が暴力で妻を支配するもの」だと思っていた上、言葉による暴力は「聞いた事も考えたこともなかった」という。
 これまでの受講回数は約50回。暴力の背景にある「ゆがんだ価値観」に気付かされ、「過去と他人は変えられない」といった視点を学んだ。相手の気持ちを変えようとすることは無意味だと知り、基本的な感情をコントロールできるまでに克服。それでも「いつ以前の状態に戻るか分からない」と、今後も毎週末の受講を続けていくつもりだ。
 妻との別居は半年ほどで解消され、今では加害者対策の拡充を願う。ただ、あくまでも被害者への支援が前提だ。「加害者の価値観は変えられても、被害者の心の傷は癒やせないから」。妻も、まだ自分を許してはいないと感じている。
 ステップは2011年4月から更生プログラムをスタートさせ、これまでに計60人ほどが受講している。暴力が原因で別居していた受講者のうち、8割が「怒りがなくなった」というものの、同居できるまでに改善したのは8人にとどまる。
 それでも、栗原理事長は一定の効果があるとして、「すべての加害者に更生プログラムを義務付ける法整備が必要」と強調している。
(2013年6月6日 神奈川新聞)

昨日、読売新聞社会面「DV加害者更生支える」に接した。
令状業務を担当していて、最近DVがらみの逮捕状請求・勾留請求が多いように感じている。警察白書での認知件数が12年は43950件で、年々増加しているというのも、請求が多いという実感と合っている。

DVケースでの令状請求の罪名としては、暴行罪*1とか、傷害罪でも全治3日とか1週間*2とか、けがとしては必ずしも大きいものでない場合も多い。

勾留請求を認めるかどうか、こういった場合、被害者が配偶者で、被疑者が家に帰ると被害者に対して罪証隠滅(被害届を取り下げさせる、「じつは殴られていません」など供述をかえさせるなど)をする可能性は高いと判断される場合が多く、初犯で想定される処分に比して、勾留の必要性ありと判断される場合が多いように思われる。家の中のことであれば、被害者が通報等しなければ判明しない場合が多いので「よく自分を警察に突き出したな」ということで被害者がさらなるDVを受けるのではないか(→これもさらなる暴行行為により畏怖を与えることで当該事案についての被害者の供述という罪証を隠滅させると考えうる)という思いが背後にある。

最終処分としても、罪名としては暴行、傷害等だと、初犯であれば一定のものにとどまらざるを得ない。「このあとどうなるんだろう…」という思いが常にあるので、記事で紹介されていたようなNPO「女性・人権支援センター ステップ」の更生プログラムなどでよい方向に向かったケースがあるときくと少しほっとする気持ちになる。「○年間暴力がなければプログラムは成功」というものがないだけに、こういった更生プログラムの効果に対しては懐疑的な考えを持たれることも多いと思う。
でも、「そういう暴力も絶対だめなの!!」って活動を地道に続けていくしかないから本当にこういうプログラムにはがんばってほしい。ここで出てくる「アウェア」「クロッケ」でのプログラムなど、機会があればぜひ見てみたい。

*1:1発殴ったとかであるけれど、全治○日という傷害の診断ができない

*2:血などでなくても直後にうっすらあざになっている打撲、など。もちろんそういうけがをさせることだって悪いけれど