やし酒飲み

やし酒飲み (岩波文庫)

やし酒飲み (岩波文庫)

「わたしは、十になった子供のころから、やし酒飲みだった。わたしの生活は、やし酒を飲むこと以外には何もすることのない毎日でした」から始まるこの小説。主人公の父は、主人公には、やし酒を飲むことしか能がないのに気が付いて、56万本のやしの木がはえているやし園をくれ、毎朝150タル、午後2時には飲み干してしまうので夕方さらに75タルのやし酒を採取してくれるやし酒造りの名人を雇ってくれたけれども、ある日そのやし酒造りが死んでしまう。それで、主人公が「死者の町」に、やし酒造りの名人を呼び戻すために探しに行く話。冒頭からして「なんだこれは!」とひきこまれてしまう。
しかもこの主人公は「神々の父」と名乗り、無理難題ふっかけられたりするんだけど鳥とか火に変身できちゃったりして、そんなんなら簡単だよねと思いきや、旅路の森とかにいろんな生き物がでてきていろいろ苦労する。白い生き物とか赤い生き物とかいろんなことが起きて最後もまぁやし酒飲みには会えるんだけど最後までいろいろ起きて、たしかに飽きない。教訓とかメッセージ性を特に感じさせないところもいい(というか全く道徳的でない)。
アフリカには行ったことないしアフリカの民話の背景とかよくしらないから、知ったらまたよくわかるところがあって面白いのかもしれない。とにかくこの本は、異世界なかんじの面白さだった。
アフリカ文学の最高傑作らしい。多和田葉子さんの解説も、よかった。