ことばと思考

ことばと思考 (岩波新書)

ことばと思考 (岩波新書)

第1章では、世界の言語はいろいろって話。数の数え方とか色とか。アマゾンの奥地で暮らすピラハ族は、1が、下がるピッチで「ホイ」、2が、上がるピッチで「ホイ」で、それより大きい数は「多い」みたいな言葉しかなくて、2つの「ホイ」も「1と2」じゃなくて「2と3」とかにもなったりするらしい。体の部位の名前を数の名前としている語もあって、左の小指からスタートして薬指、中指、・・・手、腕、肩、首といって小鼻までいくとこれが18、鼻先が19でその後は右側にいって右の小指が37にあたる。
位置関係についても前後左右を表す語がまったくない言語も多くあるらしい。
へーってかんじ。
第2章ではいわゆるウォーフ仮説を紹介し、検証する。前後左右を表す語がない言語の民族は東西南北の方向感覚に優れていて、家から100キロ離れた場所や、窓のない部屋の中で「家の方向」を正確に言い当てることができる一方、左右の概念は気にしないらしい。180度回転して「同じ順番」といわれ並べる順番も、日本語をはじめとした前後左右で位置関係を考える語族と絶対座標を使う語族では並べ方が逆になる、というように言語により認識が違うことを紹介する。
第3章では、そうはいっても言語間に言語を超えた普遍性がないかという検証。「歩く」と「走る」という日本語の基本動詞のほか、運動の様子を表す複数の動詞をもつ他の言語でも「走る」「歩く」の境は変わらなかったこと、「イヌ」のような(例示が難しいとは思うけど)どの言語にもある「基礎レベルのカテゴリー」の言葉はあること、名詞の分類方法は限られていることなど(一本」「枚」「匹」「頭」とか雑多な助数詞で分ける日本語タイプ、性によって名詞を必ず二分する言語タイプなど大きく3分される)。
第4章は、子どもの思考が言語とのかかわりでどう発達するか。生まれたばかりの頃は日本語話者の子どもでもrとlが聞き分けられるなどオープンだけれど、だんだん一つの言語により世界をカテゴリー化/ラベルづけするようになっていって「何と何が同じで何と何が違うか」という判断には言葉はとても重要だということ。そのほか赤ちゃんがどんな概念カテゴリーに親和的で直観的な理解が可能かなど。
第5章ではさらに、同一の「言語」の中でも「言葉」が「認識」にどう影響しているか、と別の角度から考える。同じ認識をした人どうしでも与えられた言葉が異なると認識が異なってくる。また、目からの認識で言語を使う必要のない場面でも無意識に言語を処理する脳の部分を使用しているという話など。終章ではまとめとともにバイリンガルについてなどを考える。
それぞれの話が面白くてこんな紹介のしかたになってしまった。実験結果で根拠も示されているから説得力があって安心して読める。一章ごとのテーマ設定も分かりやすくて最後まで面白く読めた。