司法取引導入の動きに関連して

司法取引を法制化へ 法制審、汚職や薬物事件想定
(2014/6/24 日本経済新聞
刑事司法制度全般の見直しを検討している法制審議会(法相の諮問機関)の特別部会の会合が23日開かれ、法務省が他人の犯罪を明かせば処分を軽くする「司法取引」の導入などを盛り込んだ新たな試案を示した。特別部会は今夏をメドに結論を取りまとめる方針で、法制審の答申にも盛り込まれる見通し。
司法取引を巡っては、捜査を撹乱(かくらん)する目的の虚偽の供述などが出やすくなる恐れから、日本弁護士連合会などの反発が根強い。
同省は来年の通常国会刑事訴訟法など関連法の改正案提出を目指すが、答申では、こうした懸念に配慮した表現がとられる可能性もある。
司法取引は捜査当局側が導入を求めている新たな捜査手法。
試案では、容疑者が共犯者の犯罪を供述した場合、検察官が起訴を見送ったり、略式起訴にとどめたりできるほか、求刑を軽くすることを可能にする。汚職や詐欺、金融商品取引法違反といった経済事件や、組織が関与するケースが多い薬物犯罪などを想定。検察側と弁護側の合意が適用の条件になる。
容疑者が捜査機関の知らない自身の犯罪を明らかにした場合にも刑を軽くできるようにする仕組みや、犯罪内容を正直に証言した証人は刑事責任を追及しない新たな免責制度も導入する。
司法取引は海外で広く活用されている捜査手法の一つ。米国やドイツは対象犯罪を限定せず適用し、英国では重大な犯罪に限るといった運用上の違いはあるが、いずれも事件解決に向け重要な供述を引き出すのに使われている。特別部会は今後の議論を通じ、今回の試案を最終案とする合意形成を目指す。


判例時報1583〜1627号にわたる大作「司法取引を考える(1)〜(17・完)」(宇川春彦氏)を読み終わった。司法取引を、純粋型司法取引(被告人の有罪答弁と引き替えに検察官が訴因の縮小、求刑引下げ等の譲歩を行うもの)と、捜査協力型司法取引(捜査協力・証言の見返りに譲歩を行うもの)に分け、司法取引の歴史・アメリカにおける制度内容・それぞれの司法取引について哲学的問題の検討・ありうる批判への反論から、日本への導入可能性についてまで、詳細、ほんとうに詳細に論じられていて、読みごたえがあった。
筆者は検察サイドの方らしく、結論としては司法取引導入に賛成の立場。折しも今、法制審議会での司法取引法制化の動きが報じられているけれども、現在導入が検討されているのは「捜査協力型」のほう。こちらの問題点として指摘の多い冤罪のおそれ・虚偽の誘発については、ざっくり言えば、取引された上での証言だという事実の開示・反対尋問による吟味によって慎重な判断を受けるので証明力の問題として扱うべきであるという反論。そのほか、約束による自白や補強法則との関係も丁寧に検討。
分析の前提としてアメリカの刑事司法制度についても、私のような全くの初心者にも、無令状逮捕があたりまえとか量刑が厳しいとか基本的かもしれないことからよくわかった。すごく、もっといろんなことが書かれていて、とくに哲学的問題の検討など面白かったのだけど、単に全17回を要約するだけになってしまいそうなので省略。これをもとにアウトプットもできたらいいのだけど、とりあえずはインプットの消化。。